浄化センターの臭気対策

浄化センターでは、汚泥や排水の処理過程で硫化水素やアンモニアなどの臭気成分が発生し、周辺環境への影響や作業環境の悪化を引き起こすことがあります。

本記事では、浄化センターで多く採用されている代表的な脱臭方式をご紹介。仕組みや運用コスト、メンテナンス性など比較ポイントを解説します。

浄化センターの
臭気を対策する方法の詳細

活性炭吸着法

活性炭吸着法は、装置内に充填した活性炭に臭気成分を物理的に吸着させて除去する方式です。構造がシンプルで設置しやすく、比較的小規模な臭気処理や補助的な脱臭用途に向いています。

ただし、湿度が高い環境では活性炭の微細孔が水分で塞がれ、吸着効率が低下する場合も少なくありません。浄化センターのように高湿・高濃度臭気が発生する施設では、酸性薬剤を含浸させた「改質活性炭」を使用し、吸着性能を補うのが一般的です。

主な特徴

• 構造が簡易で設置・運転が容易
• 酸含浸活性炭によりアンモニアなど塩基性ガスにも対応可能
• 高湿環境では性能低下や寿命短縮に注意が必要

薬液スクラバー法

薬液スクラバー法は、排気中の臭気ガスを薬液と接触させ、化学反応によって中和・除去する方式です。硫化水素やアンモニアなど、水溶性・反応性の高い成分に対して特に有効。ガス濃度や流量の変動にも安定して対応できるため、浄化センターでも採用しやすい方法と言えるでしょう。

一方で、薬液の交換・補充や排水処理が必要となり、運転コストや管理負荷が発生することも。適切な薬液濃度管理と安全対策が不可欠な方式です。

主な特徴

• 高濃度・高風量の排気にも安定して対応
• 化学反応による高い除去効率を発揮
• 薬液管理・排水処理の運転負荷が発生

オゾン・プラズマ法

オゾン・プラズマ法は、放電によって生成されるオゾンや反応性の高い原子や分子の酸化力を利用し、臭気成分を分解する方式です。硫化水素やメチルメルカプタンなど、酸化反応で無害化できる硫黄系臭気に対して高い効果を示します。

薬剤を使わずに広範な臭気を一括処理でき、既存ダクトへの後付けも可能。ただし、装置の初期コストが高く、残留オゾン管理や放電部のメンテナンスなど、安全面での配慮が必要です。

主な特徴

• 薬剤を使用せず酸化分解によって脱臭
• 硫黄系・混合臭にも対応可能
• 設備コストや安全管理への配慮が必要

生物脱臭法

人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給して微生物に分解させる方式です。土壌脱臭法と原理は同じですが、微生物の活性維持のための管理要素が多い点が異なります。

臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません。安定稼働には適切な管理や環境の維持が求められる方式です。

主な特徴

• 比較的コンパクトな設計が可能
• 維持管理に専門知識が必要な場合がある
• 土壌脱臭よりランニングコストがかかる

土壌脱臭法

土壌脱臭法は生物脱臭法とは異なり、土壌や樹皮、堆肥など天然の充填材に生息する微生物の酸化分解作用を利用して臭気を除去する方式です。

硫化水素やメチルメルカプタンといった有機硫黄化合物を、微生物が硫酸塩や二酸化炭素に分解。薬品や吸着材を使わない上に、専門知識は不要で誰でも管理できるため、維持管理コストも低く抑えられます。

主な特徴

• 薬液などが不要でランニングコストを抑えられる
• 長期安定運転が可能で維持管理が容易
• 高濃度臭気や短時間ピーク処理には不向き

浄化センターから悪臭がする原因

硫化水素

腐った卵のような臭いが特徴の硫化水素は、汚泥やし尿などに含まれる有機物が分解される際、酸素が不足すると発生します。嫌気性の環境下では、微生物が硫酸塩を還元し、このガスを生成。浄化センターでは、沈殿槽や汚泥濃縮槽、配管内部、ピットなど、空気の流れが少ない場所で特に起こりやすい現象です。

硫化水素は極めて低濃度でも強い臭気を放ち、濃度が高くなると金属の腐食や健康被害を引き起こす場合も少なくありません。通気や撹拌によって酸素を保持する運転管理と、発生したガスを安全に除去する設備対策の両立が求められます。

アンモニア

アンモニアは、し尿や汚泥に含まれる尿素やタンパク質が微生物によって分解される過程で発生する刺激臭を持つガスです。アルカリ性の性質があり、水のpHが高い状態になると、水に溶けにくくなり、空気中へ気体として放出されやすくなります。

この性質により汚泥処理設備や貯留槽など、pH変動が大きい工程で臭気濃度が上昇。処理水や空間のpHを安定させることが、アンモニア臭対策の基本です。

メチルメルカプタン

腐った玉ねぎのような強い臭いを放つメチルメルカプタンは、酸素が不足した嫌気的な環境で発生しやすい硫黄系化合物。わずかな濃度でも人が臭いを感じるため、苦情の原因となりやすい臭気の一つです。

汚泥の分解過程や脱水工程など、酸素供給が不十分な箇所で発生しやすく、他の臭気成分と混合して臭気を強めることもあります。確実な除去が求められるため、脱臭装置の選定時には硫黄系ガスへの対応力が重要です。

低級脂肪酸

低級脂肪酸は、酢酸、蒸れたような臭いがするプロピオン酸、腐ったバターのような臭いを発する酪酸など、複数の有機酸を含む臭気成分の総称です。これらは、し尿や汚泥に含まれる有機物が酸素の少ない状態で分解され始める初期段階で発生します。

臭気が強くなる場合、処理プロセスのどこかで嫌気的条件が進行しているサイン。とくに汚泥濃縮槽や脱水機周辺では、換気の滞りや滞留時間の増加が臭気拡散の原因になるため、運転管理と通気設計の見直しが有効です。