アンモニアの脱臭方法
強い刺激臭を放つアンモニアは、施設における悪臭問題の要因です。本記事ではアンモニアが発生する原因や発生しやすい施設、脱臭システムなどについてまとめています。
施設からアンモニアが
発生する原因
アンモニアは動物の排泄物や有機物に含まれるタンパク質や尿素の分解過程で生じるガスです。
排水処理や畜産の現場では、動物の排泄物や有機物に含まれるタンパク質・尿素が微生物の働きで分解されて、まずアンモニウムが発生。さらに、pHが高く、温度が高い環境になると、アンモニウムが気化してアンモニアとなり、空気中に放出されます。
アンモニアが発生しやすい施設
排水処理施設
水槽ブロワーの故障や汚泥の滞留、負荷変動などによる排水処理不調が起こると、槽内の酸素が不足して嫌気化しやすくなります。
酸素が足りない状態では、本来アンモニアを酸化分解する微生物の働きが弱まって、アンモニアが処理水中に残留。残ったアンモニアが空気中に揮散し、臭気の原因となります。
畜産
家畜の尿に含まれる尿素が微生物の酵素の働きで分解され、アンモニアが発生します。床やおが粉・稲わらなどにふん尿が長く残っていると、有機物の分解がさらに進んでしまい、放出されるアンモニアの量が増加。高温・高湿の環境や換気不足も、アンモニアの揮散を助長する要因です。
対策としては、小まめな清掃や十分な換気、敷料の適度な交換・乾燥が効果的。また、家畜の健康状態を維持し、ふん尿の水分量やpHを適正に保つといった、飼養環境全体を整えることも臭気抑制に効果を発揮します。
アンモニアを
脱臭する主なシステム
活性炭吸着
活性炭は様々な臭気成分に対応でき、混合臭や成分変動のある現場でも利用しやすいのが特徴です。しかし、塩基性ガスのアンモニアは、通常の活性炭では吸着効率が高くありません。表面を酸性に処理した「酸含浸活性炭」を使用すれば、除去性能を高めることも可能です。
初期費用は抑えられますが、定期的な交換が発生するので、ランニングコストがかさむ可能性がある点には要注意。また、高濃度・高湿度の環境では、水分・油分が穴を埋めてしまい、寿命が短くなります。
主な特徴
- 設備構造がシンプルで設置しやすい
- 小規模排気や補助脱臭に適する
- 吸着性能が飽和しやすく交換管理が必要
薬液スクラバー
排気中のアンモニアを酸性の薬液と接触させて化学的に中和・除去する方式。アンモニアは酸と反応して硫酸アンモニウムなどの塩となり、水中に取り込まれます。他の方式のように吸着して飽和することがなく、連続運転でも安定した除去性能が得られるのがメリットです。
薬液スクラバーは高濃度・大風量のアンモニア除去に向いており、排水処理施設や化学プラントなどで広く採用されています。ただし、薬品補給や中和排水の処理などの薬液管理は欠かせません。
主な特徴
- 高濃度ガスへの対応が可能
- 連続運転に適しており処理性能が安定
- 薬液交換やスケーリング管理が必要
オゾン・プラズマ
オゾンやプラズマ放電によって発生する活性酸素の強い酸化力を利用し、臭気物質を分解・無臭化する方式です。酸化反応は臭気成分の種類を問わずに作用するため、複数の臭気が混ざった混合臭や変動のある排気にも対応しやすいのが特徴。薬液や吸着剤を使わないため補充や廃棄の手間が少なく、メンテナンスが比較的容易です。
ただし、装置が高額で、アンモニア単独の除去を目的とする場合にはおすすめしません。また、残留オゾンの漏洩防止や可燃物の取り扱いなど、安全面に配慮した設計・運転管理が求められる点にも要注意です。
主な特徴
- 薬剤を使わず運転・管理が容易
- 低〜中濃度の臭気や局所処理に対応
- 既存設備への後付け設置が可能
生物脱臭法
人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給してアンモニアを微生物に分解させる方式です。土壌脱臭法と原理は同じですが、臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません。
また、有機性臭気を継続的に分解する仕組みであるため、アンモニアや硫化水素などが大量に発生する施設に有効な方法です。
主な特徴
- 比較的コンパクトな設計が可能
- 維持管理に専門知識が必要な場合がある
- 土壌脱臭よりランニングコストがかかる
土壌脱臭装置
土壌や樹皮チップなど微生物が生息できる媒体に排気を流し、微生物の分解作用によってアンモニアの臭気を除去する方式です。
薬品や吸着材を使わないため、消耗品コストがほとんど不要で、主なランニングコストは送風機の電力と散水にかかる水道代程度。メンテナンスも、定期的な散水と耕うんが中心で、ランニングコストを抑えやすいのがメリットがあります。
主な特徴
- 環境負荷が小さく自然分解で処理可能
- 維持管理コストが低く長期運用に適する
- 立ち上がりに時間を要し環境条件の影響を受けやすい
土壌脱臭装置
アンモニアは水溶性が高く、酸化分解によって無害化しやすい性質を持つため、微生物の働きを利用する土壌脱臭装置が効果的な方式とされています。薬剤を使わず、充填材中に生息する硝化菌や亜硝酸菌がアンモニアを硝酸塩へと変換し、安定的に除去します。
設備としては構造がシンプルで、主な維持管理は散水や通気層の管理のみ。薬液交換や吸着材の更新が不要なため、ランニングコストを大幅に抑えられます。長期的な安定運転と環境負荷の低減を両立できることから、アンモニアの脱臭対策には土壌脱臭装置がおすすめです。
本サイトでは、失敗しない土壌脱臭装置選びができるようおすすめの装置を徹底調査しました。水処理系・汚泥処理系の脱臭といった対象物別におすすめの装置を紹介。各装置におすすめの施設も記載していますので、ぜひご参考ください。
発生する臭気は、水処理系であれば低~中濃度、汚泥処理系だと高濃度の臭いに分類※されます。まず悪臭対策では、この根本的な特性を知っておくことが重要です。
こちらでは、それぞれのおすすめの土壌脱臭装置を選べるよう徹底調査。おすすめの理由も解説していますので、装置選びの参考にしてください。
ライズ
ニチボー環境エンジニアリング
- ※1参照元:ライズ公式HP【PDF】(計量証明事業所エージーサービス「検査結果報告書」2020年9月3日)(https://www.kk-raiz.jp/deodorizer/pdf/deodorizer_doc.pdf)
- ※2参照元:ニチボー環境エンジニアリング公式HP(http://biosoil21.co.jp/product/)
