畜産施設の臭気対策
畜産施設では、家畜の排せつ物や飼料の分解により発生するアンモニアや硫化水素などの臭気が、作業環境や周辺地域への影響要因に。本記事では、畜産施設における主要な臭気成分の発生要因とともに、代表的な脱臭方式の仕組みと選定のポイントを解説します。
畜産の臭気を対策する方法の詳細
活性炭吸着法
装置内に充填した活性炭の微細孔に臭気成分を吸着させて除去する方式です。構造がシンプルで設置しやすく、小規模な排気や補助的な脱臭用途に向いています。
畜産施設では、アンモニアなど塩基性ガスの除去に用いられる一方で、高湿環境や有機成分を多く含む排気では性能が低下することも少なくありません。酸含浸処理を施した改質活性炭を使用することで、吸着効率を高めることが可能です。
主な特徴
- 構造が簡易で導入コストを抑えられる
- 改質活性炭を用いることでアンモニア除去性能を強化可能
- 高湿環境や長時間運転では吸着性能が低下しやすい
薬液スクラバー法
排気ガスを酸性またはアルカリ性の薬液と接触させ、化学反応により臭気を中和・除去する方式。硫化水素やアンモニアといった反応性の高いガスに特に有効です。
畜産施設では、高濃度臭気が発生するふん尿処理施設や排水処理設備に適しています。高い除去性能を持つ一方、薬液の補充・交換および排水処理が必要で、運転管理に一定のコストと労力が不可欠。浄化センター同様、浄化槽と併設することで効率的な処理が可能です。
主な特徴
- 高濃度・高風量の排気に安定して対応可能
- 化学反応により硫化水素やアンモニアを高効率で除去
- 薬液管理・排水処理の運転コストが発生
オゾン・プラズマ法
放電によって生成されるオゾンや反応性の高い原子や分子の酸化力を利用し、臭気成分を分解・無臭化する方式。薬剤を使わず、複数の臭気を同時に処理できる点が特長です。
畜舎や飼料保管エリアのように臭気が広範囲に拡散する環境でも有効ですが、装置コストが比較的高く、残留オゾンの管理など安全対策が欠かせません。電源確保とメンテナンス計画を含めて導入を検討することが望まれます。
主な特徴
- 薬剤を使わず酸化分解により臭気を除去
- 広範囲の混合臭にも対応可能
- 設備コストと安全管理に配慮が必要
生物脱臭法
人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給して微生物に分解させる方式です。土壌脱臭法と原理は同じですが、臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません。
また、有機性臭気を継続的に分解する仕組みであるため、アンモニアや硫化水素などが大量に発生する畜産施設などの環境に有効です。
主な特徴
- 比較的コンパクトな設計が可能
- 維持管理に専門知識が必要な場合がある
- 土壌脱臭よりランニングコストがかかる
土壌脱臭法
土壌や樹皮チップ、堆肥などの充填材に生息する微生物が臭気成分を酸化分解する方式。ふん尿や汚泥由来のアンモニア・硫化水素などを微生物が硝酸塩や硫酸塩に変換し、自然の分解サイクルの中で臭気を除去することが可能です。
薬剤や吸着材を使用しないため環境負荷が低く、ランニングコストも抑えられます。特に、臭気が常時発生する畜舎や堆肥舎などでは、長期にわたって安定した処理性能を発揮。湿度や温度が微生物の活性維持に有利な点も、畜産施設との親和性を高めています。
主な特徴
- 薬液などが不要でランニングコストを抑えられる
- 低〜中濃度の連続臭気に対して高い安定性を持つ
- 高濃度臭気や低温環境では性能低下の可能性あり
土壌脱臭装置がおすすめ
畜産施設では、ふん尿処理や堆肥舎などから低〜中濃度の臭気が常時発生し、高湿度かつ有機ガスが多い環境が続きます。このような条件下では、薬品を使わず自然の分解作用で処理できる土壌脱臭装置が効果的です。
さらに、薬液補給や吸着剤交換といった運転管理が不要で、電力消費も送風機程度に抑えられます。環境負荷を軽減しつつ低ランニングコストを実現できる点からも、長期運用を前提とする畜産現場において有力な選択肢と言えるでしょう。
本サイトでは、失敗しない土壌脱臭装置選びができるようおすすめの装置を徹底調査しました。水処理系・汚泥処理系の脱臭といった対象物別におすすめの装置を紹介していますので、ぜひご参考ください。
畜産から悪臭がする原因
ふん尿の分解による臭気
畜産施設で代表的な臭気源がふん尿です。尿中の尿素が微生物によって分解されるとアンモニアが発生し、強い刺激臭を放ちます。さらに、ふんに含まれる有機物が嫌気的な環境で分解されると、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系ガスが生成。これが複合的な悪臭の原因です。
通気性が悪く湿度が高い条件では、これらのガスが滞留しやすくなり、臭気濃度が急激に上昇。適切な撹拌・通気管理により、分解過程を好気的に保つことが基本対策です。
飼料・残さの腐敗による臭気
飼料や食べ残しが長時間放置されると、糖・タンパク質・脂質が分解して酢酸、酪酸、プロピオン酸などの低級脂肪酸が発生。これらはすっぱい臭いや発酵臭を持ち、濃度が上がると強い刺激臭になります。
特に高温多湿の季節は腐敗速度が上がるため、定期的な清掃と飼料の循環管理が欠かせません。密閉型の飼料貯蔵や早期の廃棄処理が臭気拡散防止に有効です。
汚泥・排水処理工程からの臭気
ふん尿を処理する排水設備では、有機物が沈殿・分解する過程で硫化水素やアンモニアが生じます。曝気不足や滞留時間の長さが原因で、嫌気化が進行すると臭気が強まるのが原因です。
処理槽やピットの曝気を確保し、汚泥の滞留を抑えることで臭気を低減。また、脱臭装置を設置し、発生ガスを早期に捕集・処理する仕組みを整えることが効果的です。
堆肥化工程からの臭気
堆肥化の過程では、有機物が分解される際にアンモニアや硫化水素、低級脂肪酸などが一時的に放出。発酵温度が適正範囲を超えると微生物バランスが崩れ、臭気濃度が高くなることがあります。
含水率や通気の調整により、発酵を安定させることが重要。熟成後の堆肥を早期に排出・移動させることも、臭気の再発防止に有効です。
発生する臭気は、水処理系であれば低~中濃度、汚泥処理系だと高濃度の臭いに分類※されます。まず悪臭対策では、この根本的な特性を知っておくことが重要です。
こちらでは、それぞれのおすすめの土壌脱臭装置を選べるよう徹底調査。おすすめの理由も解説していますので、装置選びの参考にしてください。
ライズ
ニチボー環境エンジニアリング
- ※1参照元:ライズ公式HP【PDF】(計量証明事業所エージーサービス「検査結果報告書」2020年9月3日)(https://www.kk-raiz.jp/deodorizer/pdf/deodorizer_doc.pdf)
- ※2参照元:ニチボー環境エンジニアリング公式HP(http://biosoil21.co.jp/product/)
