特定悪臭物質22物質とは?種類と対策

特定悪臭物質とは、悪臭防止法で規制対象とされる悪臭原因物質です。現在は22物質が指定されており、工場や事業場の臭気対策では、自社の排気や排水にどの物質が含まれる可能性があるかを把握することが重要です。ここでは、特定悪臭物質22物質の種類と対策を解説します。

特定悪臭物質とは?悪臭防止法における位置づけ

悪臭防止法は、規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行い、生活環境の保全と国民の健康保護に資することを目的とした法律です。規制地域は、都道府県知事または市の区域では市長が指定します。規制地域内にある工場や事業場では、業種や規模にかかわらず、規制基準の確認が必要になる場合があります。

環境省では、排出規制の対象として、特定悪臭物質と臭気指数を示しています。特定悪臭物質は、不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質として政令で指定されるものです。現在は22物質が指定されています。一方、臭気指数は、人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化する評価方法です。

特定悪臭物質による規制は、原因物質が明確な場合に、物質ごとの濃度を測定して評価できる点が特徴です。ただし、実際の現場では複数の臭気成分が混ざることも多く、特定悪臭物質だけでは評価しきれない複合臭が問題になる場合もあります。そのため、事業場では特定悪臭物質と臭気指数の違いを理解し、自社の所在地で採用されている規制方式を確認することが大切です。

【一覧】特定悪臭物質22物質の種類・特徴・主な発生源

特定悪臭物質22物質は、においの性質や発生しやすい工程によって大きく分類できます。代表的には、アンモニアやトリメチルアミンなどの窒素化合物、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄化合物、アルデヒド類、溶剤系の有機化合物、脂肪酸類などがあります。発生源は業種ごとに異なるため、物質名だけでなく発生工程まで確認することが重要です。

窒素化合物・硫黄化合物

窒素化合物では、アンモニアとトリメチルアミンが代表的です。アンモニアは、し尿、畜産、肥料、排水処理、化製場などで問題になりやすい物質です。トリメチルアミンは、腐った魚のようなにおいとして知られ、水産加工、畜産、肥料関連の工程などで発生することがあります。

硫黄化合物には、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチルがあります。硫化水素は腐った卵のようなにおい、メチルメルカプタンは腐った玉ねぎのようなにおいと表現されることがあります。下水処理、し尿処理、パルプ・製紙、食品残さ、化製場など、有機物が分解される工程で発生しやすい傾向があります。

アルデヒド類

アルデヒド類には、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒドがあります。これらは刺激を伴うにおいとして問題になることがあり、塗装、印刷、樹脂、食品、油脂、化学品関連の工程で発生する場合があります。

アルデヒド類は、単独で強く感じられることもあれば、他の有機溶剤臭や焦げ臭、発酵臭と混ざって複合臭になることもあります。原因を把握するには、工程ごとの排気を確認し、発生タイミングや濃度変動を調べることが大切です。特に製造条件の変更や原材料の変更があった場合は、臭気成分が変化する可能性があります。

溶剤系・芳香族炭化水素など

溶剤系の物質には、イソブタノール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、スチレン、キシレンがあります。これらは塗装、印刷、接着、樹脂加工、化学品製造などで使用または発生することがあり、シンナー臭、溶剤臭、ガソリンのようなにおいとして認識される場合があります。

溶剤系の臭気は、局所排気や換気設備からまとまって排出されることがあるため、排出口での対策が重要です。また、可燃性を持つ物質もあるため、脱臭方式の選定では安全性や設備仕様の確認が欠かせません。活性炭吸着、燃焼式、触媒燃焼式などを検討する際は、濃度・風量・温度・安全対策をあわせて確認する必要があります。

脂肪酸類

脂肪酸類には、プロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸があります。酸っぱいにおい、汗のようなにおい、むれた靴下のようなにおいとして感じられることがあります。畜産、廃棄物処理、食品加工、でんぷん関連、排水処理など、有機物が発酵・分解する工程で問題になる場合があります。

脂肪酸類は低濃度でも不快に感じられることがあり、排水槽、汚泥、廃棄物保管場所などが発生源になることがあります。排水や廃棄物の滞留、嫌気化、清掃不足があると臭気が強くなる可能性があります。対策では、発生源の密閉や清掃に加え、排水処理設備や保管場所の管理が重要です。

特定悪臭物質22物質の名称

特定悪臭物質22物質は、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソブタノール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、スチレン、キシレン、プロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸です。自社で発生する可能性がある物質を整理し、測定と対策の優先順位を決めることが大切です。

特定悪臭物質に対する効果的な脱臭・悪臭対策

特定悪臭物質への対策は、原因物質の種類、濃度、風量、温度、湿度、発生時間、排出経路によって変わります。においが強いからといって、どの脱臭装置でも同じ効果が期待できるわけではありません。まずは発生源を調査し、対象物質の特性を把握したうえで、適した脱臭方式を選定することが重要です。

水溶性・酸性・アルカリ性に応じて方式を選ぶ

アンモニアや硫化水素など、水や薬液で処理しやすい成分は、薬液洗浄方式が候補になる場合があります。酸性ガスにはアルカリ性薬液、アルカリ性ガスには酸性薬液を用いるなど、対象成分に合わせて処理条件を設計します。ただし、薬液濃度やpH管理、排水処理、ノズルや充填材のメンテナンスが必要です。

薬液洗浄方式は、対象成分が明確で、濃度や風量が把握できている場合に検討しやすい方式です。一方で、複数の臭気成分が混在する場合は、単独の薬液洗浄だけで十分な効果が得られないこともあります。その場合は、前処理や別方式との組み合わせを検討します。

溶剤系臭気には吸着・燃焼方式を検討する

トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトンなどの溶剤系臭気では、活性炭吸着法や燃焼式、触媒燃焼式が候補になる場合があります。活性炭吸着法は、比較的低濃度の有機溶剤臭に用いられることがありますが、吸着能力が低下した場合は活性炭の交換が必要です。

燃焼式や触媒燃焼式は、有機系臭気を酸化分解する方式です。高濃度排気に適する場合がありますが、燃料代、排熱、安全対策、触媒交換などを含めた検討が必要です。可燃性成分を扱う場合は、装置選定だけでなく、防爆や安全管理の条件も確認しなければなりません。

複合臭や幅広い成分には土壌脱臭も選択肢になる

食品工場、畜産施設、排水処理施設などでは、硫黄化合物、窒素化合物、脂肪酸類などが混ざった複合臭が発生することがあります。このような臭気では、単一成分だけを対象にした対策では十分でない場合があります。低濃度から中濃度の臭気が継続的に発生する現場では、微生物の働きを利用する土壌脱臭や生物脱臭が候補になることがあります。

土壌脱臭は、燃料や薬液の使用量を抑えやすく、条件が合えばランニングコストを管理しやすい方式です。ただし、設置スペース、水分管理、通気性、温度、pHなどの管理が必要です。導入時には、臭気成分との相性だけでなく、維持管理を継続できる体制まで確認しましょう。

発生源対策と維持管理を組み合わせる

脱臭装置を導入しても、発生源対策が不十分であれば、装置への負荷が大きくなり、十分な効果が得られないことがあります。原料や廃棄物の保管方法、排水の滞留、清掃頻度、局所排気の位置、ダクト内の汚れなどを見直すことが重要です。臭気の発生量を抑えることで、脱臭装置の負担を軽減しやすくなります。

また、脱臭設備は設置後の維持管理が欠かせません。活性炭の交換、薬液濃度の管理、燃焼温度の確認、送風機やダクトの点検、土壌や担体の状態確認など、方式ごとの管理項目を定めて運用します。環境省の手引きでも、防脱臭装置の維持管理や点検、補修・交換、異常時対応の重要性が示されています。

まとめ

特定悪臭物質22物質は、悪臭防止法で規制対象とされる代表的な悪臭原因物質です。窒素化合物、硫黄化合物、アルデヒド類、溶剤系物質、脂肪酸類など、種類によって発生源や適した対策は異なります。工場や施設では、まず自社の排気・排水に含まれる可能性がある物質を把握し、測定、発生源対策、脱臭装置の導入、維持管理を組み合わせて、現場に合った悪臭対策を進めましょう。