硫化水素の脱臭方法

硫化水素は、発生源や濃度によって適した脱臭方式が異なるため、正確な原因把握とシステム選定が重要です。本記事では、硫化水素が発生する主な要因や、発生しやすい施設、代表的な脱臭技術について解説します。

施設から硫化水素が発生する原因

硫化水素は、排水や汚泥などの有機物が酸素不足の環境下で分解される際に発生。嫌気的な状態になると硫酸塩還元菌が活動し、硫酸塩を還元することで硫化水素が生成されます。

硫化水素は腐卵臭を持つ有毒ガスであり、濃度が上昇すると人体や設備への悪影響が懸念されるため、適切な管理と早期の対策が不可欠です。

硫化水素が発生しやすい施設

排水処理施設

排水処理施設では、有機物を含む排水が沈砂池や調整槽などに滞留する過程で嫌気的な環境が生じ、硫酸塩還元菌が活性化。その結果硫酸塩が還元されて硫化水素が発生します。

設備内部の腐食や作業環境への影響を防ぐため、適切な換気や脱臭システムの導入が重要です。

食品工場

食品加工や製造工程では、排水中に糖類やアミノ酸などの有機成分が多く含まれるため、酸素が不足しやすく、硫化水素の発生リスクが高まります。

特に排水処理ラインや汚泥処理槽などは発生源となりやすいです。定期的な清掃や設備点検に加え、脱臭装置の導入が効果的でしょう。

硫化水素を脱臭する主なシステム

活性炭吸着

活性炭吸着法は、装置内に充填した活性炭に硫化水素を吸着させて除去する方式。比較的シンプルな構造で設置が容易なため、排気量が少ない施設や補助的な脱臭用途に適しています。

ただし、吸着性能には限界があり、定期的な活性炭交換や処理能力の管理が必要です。

主な特徴

  • 設備コストが低く小規模施設にも導入しやすい
  • 維持管理が簡易だが活性炭の交換頻度に注意が必要
  • 濃度変動が大きい現場や高濃度ガス処理には不向き

薬液スクラバー法

薬液スクラバー法は、硫化水素を含むガスを薬液で洗浄し、化学反応により中和・除去する方式です。

ガス濃度が高い場合や、連続的な脱臭が求められる施設で多く採用されています。薬液の種類や循環条件によって性能が左右されるため、運転管理が欠かせません。

  • 高濃度ガスに対応できる処理性能
  • 運転コストは薬液交換や補充により変動
  • 設計や管理を誤るとスケーリングや薬液劣化が発生

オゾン・プラズマ法

オゾン・プラズマ法は、放電によって酸化力の非常に強い活性種を発生させ、臭気成分を酸化分解する方式です。硫化水素の場合、活性種がH₂Sを酸化して硫黄や二酸化硫黄などに変化させることで臭気を除去します。

薬剤を使用せず、運転操作が容易なのが特徴。低〜中濃度の硫化水素や排気量の比較的少ない局所臭気の処理に適しており、既存ダクトへの後付けや薬液管理が難しい現場にも導入しやすい構造と言えます。

  • 薬剤を使わず運転・管理が容易
  • 低〜中濃度の硫化水素や局所臭気に対応
  • 既存設備への後付け設置がしやすい

生物脱臭法

人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給して硫化水素を微生物に分解させる方式です。土壌脱臭法と原理は同じですが、臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません

また、有機性臭気を継続的に分解する仕組みであるため、アンモニアや硫化水素などが大量に発生する施設に有効な方法です。

主な特徴

  • 比較的コンパクトな設計が可能
  • 維持管理に専門知識が必要な場合がある
  • 土壌脱臭よりランニングコストがかかる

土壌脱臭法

土壌脱臭法は、土壌や樹皮チップなどの充填材に生息する微生物の分解作用を利用して、硫化水素の臭気を除去する方式です。薬品や吸着材を使用しないため、消耗品コストがほとんど発生せず、主なランニングコストは送風機の電力と散水用の水道代に限られます。

定期的な散水と耕うんを中心としたメンテナンスで運用でき、長期的にも安定した低コスト運転を実現。一方で、接触時間と設置面積を十分に確保する必要があり、狭小敷地や高濃度ガスの処理には不向きな面もあります。広い敷地を確保できる環境であれば、持続的かつ効率的な脱臭方式として有効です。

  • 自然由来の分解プロセスで環境負荷が少ない
  • 維持管理コストが低く長期運用に適する
  • 気温・湿度条件に左右されやすく初期の立ち上がりに時間を要する
硫化水素には
土壌脱臭装置が有効

酸化反応によって容易に分解され硫黄や硫酸へ変化する性質を持つ硫化水素。この特性を生かし、微生物の酸化作用を利用する土壌脱臭装置は、硫化水素処理に高い効果を発揮します。薬剤を使わず、充填材表面に定着した硫黄酸化細菌が硫化水素を酸化し、持続的に臭気を抑制できるのです。

この方式は、排水処理設備や生ごみ・汚泥貯留設備など、日常的に硫化水素が発生する施設で多く採用。環境条件の変動にも安定して対応できるうえ、運用のしやすさやランニングコストの低さも大きな利点です。

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