食品工場の臭気対策
本記事では、食品工場の脱臭対策に有効な脱臭方式をご紹介。各方式の特徴や選定のポイントをわかりやすくまとめました。食品工場から発生する臭気の種類の特徴にも触れていますので、臭気問題が課題の企業はぜひご確認ください。
食品工場の
臭気を対策する方法の詳細
活性炭吸着法
活性炭吸着法は、装置内に充填した活性炭に臭気成分を物理的に吸着させて除去する方式です。構造がシンプルで導入しやすく、小規模な排気処理や補助的な脱臭用途に向いています。
食品工場では、調理工程や包装ライン、貯留タンクなどから発生する中低濃度の臭気処理に利用されるのが一般的。ただし、高湿環境では活性炭の孔が水分で塞がり性能が低下するため、酸性薬剤を含浸させた「改質活性炭」を使用するのが一般的です。
主な特徴
- 構造がシンプルで設置が容易
- 改質活性炭で多様な臭気に対応可能
- 高湿環境では性能低下や交換頻度の増加に注意が必要
薬液スクラバー法
薬液スクラバー法は、排気中の臭気を薬液と接触させ、化学反応によって中和・除去する方式です。アンモニアや硫化水素など水溶性・反応性の高いガスに対して高い効果を発揮します。
食品工場では、発酵槽や排水処理設備など高濃度臭気が発生する工程で活用。ガス濃度変動にも強く、連続運転に適していますが、薬液補充や排水処理の管理は欠かせません。設備運転を安定させるためには、濃度管理や安全対策が重要です。
主な特徴
- 高濃度・大風量の臭気処理に適する
- 反応性ガスに対して高い除去効率を発揮
- 薬液管理や排水処理の運転負荷が発生
オゾン・プラズマ法
オゾン・プラズマ法は、放電によって発生するオゾンや反応性の高い原子や分子の酸化力を利用し、臭気成分を分解・無臭化する方式。酸化反応が臭気成分の種類を問わず作用するため、調理・発酵・油脂加熱など多様な臭気の同時処理が可能です。
薬剤を使わずメンテナンスも比較的容易で、既存ダクトへの後付けにも対応。ただし、装置の初期コストが高いほか、残留オゾンや放電部の安全管理には十分な配慮が求められます。
主な特徴
- 薬剤を使わず酸化分解で脱臭
- 複合臭や変動排気に柔軟に対応可能
- 初期コストと安全管理に配慮が必要
生物脱臭法
人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給して微生物に分解させる方式です。土壌脱臭法と原理は同じですが、臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません。
また、食品工場では一部の食品加工工程や、発酵を伴う製品の製造過程で発生する臭気の処理に利用されることが多いです。
主な特徴
- 比較的コンパクトな設計が可能
- 維持管理に専門知識が必要な場合がある
- 土壌脱臭よりランニングコストがかかる
土壌脱臭法
土壌脱臭法は、土壌や樹皮、堆肥などの充填材に生息する微生物が臭気成分を酸化分解する方式です。微生物が硫黄化合物や低級脂肪酸などを硫酸塩・二酸化炭素に分解することで、自然の酸化サイクルの中で脱臭を実現します。
薬品や吸着材を使用しないため、環境負荷が小さく維持管理コストも低いのが特長。比較的低〜中濃度の臭気に安定して対応でき、調理・加工・排水処理のような常時発生する臭気源に向いています。
主な特徴
- 薬液などが不要でランニングコストを抑えられる
- 長期安定運転が可能で維持管理が容易
- 高濃度臭気や短時間ピーク処理には不向き
土壌脱臭法がおすすめ
土壌脱臭法は食品工場に多い低〜中濃度の臭気対策に向いています。加えて、専門的な知識を持たずに長期的な安定運転が可能。薬液管理や吸着材交換といったメンテナンス負担が少なく、ランニングコストを抑えながら継続的な運用ができる点も大きなメリットです。
食品工場のように臭気発生源が分散しやすく、常時稼働が求められる現場において、特に効果を発揮します。
本サイトでは、失敗しない土壌脱臭装置選びができるようおすすめの装置を徹底調査しました。食品工場のような水処理系の脱臭を得意とする装置も紹介していますので、ぜひご参照ください。
食品工場から悪臭がする原因
発酵・熟成工程による臭気
発酵や熟成の工程では、酵母や乳酸菌などの微生物が原料中の糖やアミノ酸を分解する過程で、アルコールや有機酸、硫黄化合物などの臭気成分が発生。製造上必要な反応である一方、温度や時間の管理が不十分な場合に臭気が強くなることも少なくありません。
特に、発酵槽や熟成室内の換気が不足すると、臭気成分が滞留し、周辺環境へ拡散する可能性が高まります。
加熱・調理工程での
油脂臭・焦げ臭
フライ・焼成などの高温調理工程では、油脂やタンパク質が熱分解し、アクロレインやアルデヒド類などの刺激臭を放出。発生量が多く拡散性が高いため、製造ライン全体に臭気が広がりやすいのが特徴です。
油脂が酸化した状態で再加熱されると、臭気がさらに強くなる傾向があるため、排気ダクトやフィルターの定期清掃が欠かせません。
排水処理設備・汚泥由来の臭気
原料洗浄や加工時の排水には多量の有機物が含まれ、処理槽で酸素が不足すると硫化水素やメチルメルカプタンなどの強い臭気が生じます。嫌気的な環境で微生物分解が進むことで生成されるため、滞留部の通気性確保が重要です。
排水処理設備では、曝気槽や沈殿槽など臭気が発生しやすい箇所を特定し、適切な換気および脱臭システムを組み合わせることで、臭気拡散を防止できるでしょう。
原料・副産物の貯留・廃棄工程
原料保管庫や廃棄物ストックヤードでは、動植物性原料の分解や油脂の酸化によって強い腐敗臭が発生。特に高温多湿の季節は微生物の活動が活発化し、臭気濃度が上昇しやすくなります。
保管環境を低温・低湿に保つこと、滞留期間を短縮することが、臭気発生を抑える基本的な運用対策です。
発生する臭気は、水処理系であれば低~中濃度、汚泥処理系だと高濃度の臭いに分類※されます。まず悪臭対策では、この根本的な特性を知っておくことが重要です。
こちらでは、それぞれのおすすめの土壌脱臭装置を選べるよう徹底調査。おすすめの理由も解説していますので、装置選びの参考にしてください。
ライズ
ニチボー環境エンジニアリング
- ※1参照元:ライズ公式HP【PDF】(計量証明事業所エージーサービス「検査結果報告書」2020年9月3日)(https://www.kk-raiz.jp/deodorizer/pdf/deodorizer_doc.pdf)
- ※2参照元:ニチボー環境エンジニアリング公式HP(http://biosoil21.co.jp/product/)
