排水処理の悪臭対処法
排水処理の過程で発生する悪臭は、施設運営において避けて通れない課題のひとつです。 近隣環境への影響だけでなく、法令順守や職場環境の維持にも関わるため、計画的な対策が求められます。
本記事では、排水処理施設で発生する悪臭の主な原因と発生メカニズムを解説するとともに、悪臭が及ぼす影響や有効な対処法をまとめました。
排水処理関連設備や
周辺インフラにおける悪臭の原因
ビルピットに発生する臭気
ビルの地下に設けられたビルピットは、汚水が滞留しやすく、内部が嫌気状態になると硫化水素などの悪臭成分が発生します。
清掃や点検が不十分な場合は、槽内に堆積した汚泥が腐敗し、臭気が建物内外に広がり苦情が多発するケースも少なくありません。定期的な排水槽の清掃や換気の確保が、不快臭の発生を防ぐ基本対策です。
下水管内で発生する悪臭
下水管では、生活排水に含まれる有機物が微生物によって分解される過程で悪臭が生じます。 特に酸素が不足する嫌気的な環境では、硫化水素やメチルメルカプタンなどの強い臭気成分が生成されることが多いです。
また、排水量の減少や気温上昇によっても臭気が発生。放置すると管内の腐食や周辺地域への臭気拡散につながる恐れがあります。
排水処理施設の臭気が与える影響
法令違反につながるリスク
悪臭防止法に基づく規制
排水処理施設で発生する悪臭が、敷地境界線で定められた臭気濃度または臭気指数の基準を超える場合、悪臭防止法の規制対象となる恐れがあります。
基準超過の状態が続くと、改善勧告や改善命令が発せられ、最終的には操業停止などの行政措置に発展する可能性も否定できません。 法令を適正に遵守するためには、定期的な臭気測定に加え、発生源の特定と対策記録の管理を継続的に行うことが重要です。
労働安全衛生法における管理義務
硫化水素やアンモニアなど、排水処理過程で発生する有害ガスは、労働安全衛生法により管理対象物質として扱われています。
高濃度の硫化水素は労働災害の原因となる危険性が高く、排水ピットや汚泥槽など密閉空間では特に注意が必要。 作業員の安全を確保するため、換気設備の整備やガス検知器の設置、保護具の着用といった予防措置を計画的に実施することが重要です。
下水道法による排水基準の遵守
排水処理施設から下水道に放流される水質は、下水道法により定められた排水基準を満たさなければなりません。
汚水や汚泥中の有機物が分解されずに残ると、下水道内で悪臭やガスが発生し、公共施設への損害を引き起こす可能性があります。 pHなどの項目を定期的に確認し、放流基準を遵守することが不可欠です。
作業環境への影響
硫化水素やアンモニアなどの有害ガスが発生し、作業員が吸引すると頭痛や吐き気などの健康を害する危険性があります。
強い臭気が持続する環境では、作業効率の低下や集中力の喪失にもつながりやすいため、長時間の作業は避けましょう。 安全な作業環境を維持するためには、換気設備の稼働状況を定期的に確認し、ガス検知器の設置や保護具の適切な使用を徹底することが重要です。
設備・施設への影響
臭気成分が設備内部に付着したり、金属部材を腐食させたりすることで、装置の性能や耐久性を損なうケースも少なくありません。
特に硫化水素は腐食性が高く、ブロワや配管、ポンプなどの金属部品に影響を及ぼしやすいため、早期の対策が求められます。 腐食や付着が進行すると、機器の効率低下や漏洩事故につながる可能性があるため、定期的な点検と部材の交換、換気経路の清掃を計画的に実施することが重要です。
排水処理施設における
悪臭の対処方法
活性炭吸着法
活性炭の微細孔に臭気成分を物理的に吸着させて除去する方式です。幅広い臭気物質に有効で信頼性が高く、装置構造も比較的シンプルに構成できます。
ただし、吸着容量には限界があるため、活性炭の定期的な交換が不可欠。また、高湿度や粉じん、油分を含むガスでは吸着効果が低下しやすく、前処理を行う必要が生じる場合もあります。
主な特徴
- 構造が簡易で設置・運転が容易
- 酸含浸活性炭によりアンモニアなど塩基性ガスにも対応可能
- 高湿環境では性能低下や寿命短縮に注意が必要
薬液スクラバー法
水や薬液(酸・アルカリなど)を用いて臭気ガスを洗浄し、臭気成分を液中で吸収・中和して除去する方式です。硫化水素などはアルカリ液で、アンモニアなどは酸性液で処理します。
高濃度の臭気にも対応でき、同時にガス中の粉じん除去や冷却も行える点が主な利点。一方で、洗浄後の廃液処理が必要になるほか、薬液の濃度管理や補充など、専門知識を要する運転管理が欠かせません。
主な特徴
- 高濃度・高風量の排気にも安定して対応
- 化学反応による高い除去効率を発揮
- 薬液管理・排水処理の運転負荷が発生
オゾン・プラズマ法
オゾンやプラズマ放電で生成される酸化作用を利用し、臭気物質を化学的に分解する方式。ガス流速が低く滞留しやすい地下ピットや配管内での臭気対策に利用されるケースが多く、設置スペースが限られる場所でも導入しやすいです。
一方で、高濃度の臭気処理には不向きで、処理後に副生成物が残る場合も。そのため、運転時にはオゾン漏洩の防止や電極の定期的なメンテナンスなど、安全面への配慮が欠かせません。
主な特徴
- 薬剤を使用せず酸化分解によって脱臭
- 硫黄系・混合臭にも対応可能
- 設備コストや安全管理への配慮が必要
生物脱臭法
人工の充填材に微生物を付着させ、そこに悪臭ガスを通気し、水分や栄養分を供給して微生物に分解させる脱臭方法。土壌脱臭法と原理は同じですが、微生物の活性維持のための管理要素が多い点が異なります。
臭気の処理能力が微生物の状態に依存するため、厳密な温度調整や湿度管理は避けられません。安定稼働には適切な管理や環境の維持が求められる方式です。
主な特徴
- 比較的コンパクトな設計が可能
- 維持管理に専門知識が必要な場合がある
- 土壌脱臭よりランニングコストがかかる
土壌脱臭法
土壌中の微生物の働きを利用する土壌脱臭法。臭気ガスを土壌層に通過させることで、微生物が臭気成分を栄養源として分解します。
活性炭のように資材を定期交換する必要がなく、ランニングコストを低く抑えられるのが特長で、比較的低〜中濃度の臭気に適しています。一方で、微生物を利用するため広い設置面積が必要となり、高濃度の臭気処理には不向きです。また、適切な稼働を維持するには、濃度にかかわらず定期的に土壌の様子を点検することが重要です。
主な特徴
- 薬液などが不要でランニングコストを抑えられる
- 長期安定運転が可能で維持管理が容易
- 高濃度臭気や短時間ピーク処理には不向き
土壌脱臭装置おすすめ
2選を特集!
本サイトでは、「臭いが消えない」「維持費がかさむ」など、失敗しない土壌脱臭装置選びができるようおすすめの装置を調査しました。
中でも、給食センターや公共施設などから発生する【水処理系の脱臭】と、し尿処理場や堆肥化施設などから発生する【汚泥処理系の脱臭】それぞれに適した装置を厳選。おすすめの理由をわかりやすく解説し、事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
発生する臭気は、水処理系であれば低~中濃度、汚泥処理系だと高濃度の臭いに分類※されます。まず悪臭対策では、この根本的な特性を知っておくことが重要です。
こちらでは、それぞれのおすすめの土壌脱臭装置を選べるよう徹底調査。おすすめの理由も解説していますので、装置選びの参考にしてください。
ライズ
ニチボー環境エンジニアリング
- ※1参照元:ライズ公式HP【PDF】(計量証明事業所エージーサービス「検査結果報告書」2020年9月3日)(https://www.kk-raiz.jp/deodorizer/pdf/deodorizer_doc.pdf)
- ※2参照元:ニチボー環境エンジニアリング公式HP(http://biosoil21.co.jp/product/)
