脱臭装置のランニングコストとは?
脱臭装置は、導入費だけでなく、稼働後に継続して発生するランニングコストも考慮して選ぶことが重要です。電気代や燃料代、薬液・ろ材の交換費、保守点検費は、脱臭方式や処理条件によって変わります。ここでは、脱臭装置のランニングコストの内訳と方式別の特徴、費用を適正に抑えるための考え方を解説します。
脱臭装置にかかるランニングコストの内訳
脱臭装置のランニングコストは、装置を稼働させるための動力費だけで決まるものではありません。処理する臭気の濃度、風量、稼働時間、排気温度、湿度、粉じんの有無、使用する脱臭方式によって、発生する費用の種類や割合が変わります。導入前に見積もりを確認する際は、装置本体の価格だけでなく、年間の運転費用まで含めて比較することが大切です。
電気代
電気代は、送風機、ポンプ、制御盤、ヒーターなどを動かすために発生する費用です。特に大風量の排気を処理する場合、送風機の消費電力がランニングコストに影響します。薬液洗浄方式では循環ポンプ、生物脱臭法では散水設備や送風設備、活性炭吸着法では主に送風機の電力が必要です。稼働時間が長い工場や24時間操業の施設では、年間では大きな差になることがあります。
燃料代
燃焼式の脱臭装置では、臭気成分を高温で分解するためにガスや灯油などの燃料を使用します。直接燃焼式は高温処理が必要になるため、燃料代がランニングコストの中心になりやすい方式です。一方、触媒燃焼式は触媒を用いることで、直接燃焼式より低い温度帯で処理できる場合があります。ただし、処理ガスの濃度や風量、熱回収の有無によって費用は変動します。
水道代・薬液代
薬液洗浄方式では、臭気成分を水や薬液に吸収させて除去するため、水道代や薬液代が発生します。酸性ガス、アルカリ性ガスなど、対象となる臭気成分に応じて使用する薬液が異なり、薬液濃度の管理も必要です。また、循環液の入れ替えや排水処理が必要になる場合は、排水処理費用も含めて検討する必要があります。
消耗品・ろ材交換費
活性炭吸着法では、活性炭が臭気成分を吸着することで脱臭します。そのため、吸着能力が低下した場合は活性炭の交換が必要です。臭気濃度が高い、油分や粉じんが多い、湿度が高いといった条件では、交換頻度が上がることがあります。生物脱臭法では担体や散水設備の管理が必要になる場合があり、薬液洗浄方式でもノズルや充填材の洗浄・交換が発生することがあります。
保守点検費
脱臭装置は、導入後の維持管理によって性能の安定性が左右されます。定期点検では、圧力損失、風量、薬液濃度、燃焼温度、活性炭の劣化状況、異音や漏れの有無などを確認します。点検を怠ると、脱臭効率の低下だけでなく、予定外の修理費につながる可能性があります。
参照元:環境省 防脱臭技術の適用に関する手引き (https://www.env.go.jp/air/akushu/tebiki/index.html)
【方式別】脱臭装置のランニングコスト比較
脱臭装置のランニングコストは、方式ごとに費用が発生するポイントが異なります。単純に安い方式を選ぶのではなく、臭気成分との相性、濃度変動、処理風量、設置スペース、運転時間を踏まえて比較する必要があります。方式選定では、事前調査を行い、各技術の特性を確認したうえで判断することが重要です。
参照元:環境省 におい対策・かおり環境について (https://www.env.go.jp/air/akushu/akushu.html)
活性炭吸着法
活性炭吸着法は、活性炭に臭気成分を吸着させる方式です。構造が比較的シンプルで、燃料や薬液を使用しないため、日常運転にかかる費用は電気代が中心です。一方で、活性炭の交換費用がランニングコストに大きく関わります。低濃度で風量が比較的小さい臭気には使いやすい方式ですが、高濃度の臭気や成分変動が大きい排気では、活性炭の消耗が早まり、交換頻度が増えることがあります。
また、油分や粉じんを含む排気をそのまま処理すると、活性炭の目詰まりや吸着性能の低下につながる場合があります。そのため、前処理設備を組み合わせることで、ろ材寿命を延ばしやすくなります。初期費用を抑えやすい反面、交換周期を見誤ると運用費が想定より高くなるため、臭気濃度と年間稼働時間をもとに交換費を試算することが重要です。
直接燃焼式・触媒燃焼式
燃焼式は、臭気成分を高温で酸化分解する方式です。高濃度の有機溶剤臭や、燃焼処理に適した成分を含む排気に用いられることがあります。直接燃焼式は処理能力を確保しやすい一方、燃料代が大きくなりやすい点に注意が必要です。排気量が多い場合や稼働時間が長い場合は、燃料費が年間コストに影響します。
触媒燃焼式は、触媒を利用して直接燃焼式より低い温度帯で処理できる場合があります。ただし、触媒の劣化や被毒、交換費用を考慮する必要があります。対象ガスに触媒へ悪影響を与える成分が含まれている場合は、前処理や別方式の検討が必要です。燃焼式を比較する際は、燃料代だけでなく、熱回収の有無や触媒交換まで確認するとよいでしょう。
薬液洗浄方式
薬液洗浄方式は、臭気成分を水や薬液に接触させて吸収・中和する方式です。酸性ガスやアルカリ性ガスなど、水や薬液に溶けやすい成分に適しています。ランニングコストとしては、循環ポンプや送風機の電気代、薬液代、水道代、排水処理費、充填材やノズルのメンテナンス費が発生します。
薬液濃度やpH管理が適切でない場合、脱臭効果が低下することがあります。また、処理対象の臭気が変動する場合は、薬液の種類や注入量の調整が必要です。薬液洗浄方式は、対象成分が明確で管理体制を整えられる施設では選択肢になりますが、薬液補充や排水処理を含めた運用体制を事前に確認しておくことが重要です。
生物脱臭法
生物脱臭法は、微生物の働きで臭気成分を分解する方式です。燃料を多く使わないため、条件が合えばランニングコストを抑えやすい方式です。主な費用は、送風機や散水設備の電気代、水道代、担体や設備の維持管理費です。低濃度で連続的に発生する臭気に適用しやすく、下水処理施設や畜産関連施設などで検討されることがあります。
一方で、微生物の活動には温度、水分、pH、栄養条件などが関係します。急激な濃度変動や高濃度ガス、微生物に悪影響を与える成分が含まれる場合は、処理性能が安定しにくいことがあります。また、装置の設置スペースが大きくなるケースもあるため、既存施設への導入では配置計画の確認が必要です。
方式別に見た費用の考え方
活性炭吸着法は、電気代は比較的抑えやすいものの、活性炭の交換費が重要です。燃焼式は、処理条件に合えば高濃度臭気に対応しやすい一方、燃料代や触媒交換費を見込む必要があります。薬液洗浄方式は、薬液代と排水処理費を含めて検討することが欠かせません。生物脱臭法は、条件が合えば運用費を抑えやすいものの、微生物管理や設置スペースが課題になる場合があります。
脱臭装置のランニングコストを抑えるポイント
脱臭装置のランニングコストを抑えるには、導入後に節約するのではなく、導入前の条件整理が重要です。臭気の種類や濃度を把握しないまま装置を選ぶと、必要以上に大きな装置を導入したり、消耗品の交換頻度が増えたりする可能性があります。費用を適正化するには、現場条件に合った方式を選ぶことが基本です。
対象臭気・濃度に合った方式を選ぶ
最初に確認すべきことは、どのような臭気成分を、どの程度の濃度と風量で処理するのかという点です。低濃度で安定した臭気であれば活性炭吸着法や生物脱臭法が候補になる場合があります。水に溶けやすい酸性・アルカリ性の成分であれば薬液洗浄方式が適することがあります。高濃度の有機系臭気では燃焼式が検討される場合もあります。
ただし、実際の適否は排気条件によって変わります。温度や湿度、粉じん、油分、濃度変動の有無を確認し、必要に応じて前処理設備を組み合わせることが大切です。前処理によって装置本体の負荷を下げられれば、消耗品交換や清掃頻度の抑制につながる可能性があります。
イニシャルコストとのトータルバランスを見る
導入費が低い装置でも、消耗品交換や燃料代が高くなれば、長期的な総費用は大きくなることがあります。反対に、導入費が高めでも、省エネ設計や熱回収によって運転費を抑えられる場合もあります。そのため、比較時には装置本体価格だけでなく、年間稼働時間を前提に、電気代、燃料代、薬液代、ろ材交換費、点検費を含めたトータルコストで見ることが重要です。
特に24時間稼働する工場や、年間を通して臭気対策が必要な施設では、ランニングコストの差が数年単位で大きくなります。見積もりを確認する際は、月額費用だけでなく、1年、3年、5年程度の運用費を想定して比較すると判断しやすくなります。
定期メンテナンスを前提に運用する
ランニングコストを抑えるうえで、メンテナンスは削る対象ではなく、余分な修理費や性能低下を防ぐための管理項目です。圧力損失の上昇、薬液濃度の低下、燃焼温度の異常、活性炭の破過、散水不良などを早めに把握できれば、トラブルが大きくなる前に対応できます。
脱臭装置は設置して終わりではなく、運転条件に合わせて管理することで性能を維持しやすくなります。点検記録を残しておくと、交換周期の見直しや次回更新時の方式選定にも役立ちます。
複数方式の組み合わせも検討する
臭気の種類が複数ある場合や、濃度変動が大きい場合は、単独方式だけで対応しようとすると運用費が高くなることがあります。たとえば、粉じんや油分を前処理で除去してから活性炭に通す、薬液洗浄で水溶性成分を処理してから別方式で仕上げるなど、段階的な処理を行うことで装置への負荷を抑えられる場合があります。
組み合わせ方式は初期費用が上がることもありますが、消耗品の寿命延長や処理安定性の向上につながることがあります。導入前には、現場の臭気測定や排気条件の整理を行い、長期的な運用費まで含めて検討することが大切です。
まとめ
脱臭装置のランニングコストは、電気代、燃料代、薬液・水道代、消耗品交換費、保守点検費などで構成されます。活性炭吸着法、燃焼式、薬液洗浄方式、生物脱臭法では、費用が発生するポイントが異なるため、方式ごとの特徴を理解して選ぶことが重要です。導入時は初期費用だけで判断せず、臭気成分、濃度、風量、稼働時間、メンテナンス体制を踏まえて、長期的な総費用で比較しましょう。
発生する臭気は、水処理系であれば低~中濃度、汚泥処理系だと高濃度の臭いに分類※されます。まず悪臭対策では、この根本的な特性を知っておくことが重要です。
こちらでは、それぞれのおすすめの土壌脱臭装置を選べるよう徹底調査。おすすめの理由も解説していますので、装置選びの参考にしてください。
ライズ
ニチボー環境エンジニアリング
- ※1参照元:ライズ公式HP【PDF】(計量証明事業所エージーサービス「検査結果報告書」2020年9月3日)(https://www.kk-raiz.jp/deodorizer/pdf/deodorizer_doc.pdf)
- ※2参照元:ニチボー環境エンジニアリング公式HP(http://biosoil21.co.jp/product/)
