薬液洗浄式スクラバーと土壌脱臭装置の違い

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脱臭設備の更新設計で「スクラバー」と「土壌脱臭」を並べて検討する場面は少なくありません。ただし、ひとくちにスクラバーといっても薬液を使う方式と微生物を使う方式があり、混同されたまま比較が進むことがあります。本記事では、薬液洗浄式スクラバーと土壌脱臭装置の違いを、仕組み・運転条件・維持管理の観点から整理します。

薬液洗浄式スクラバーと土壌脱臭装置の仕組みの違い

薬液洗浄式スクラバーは化学的な中和・酸化で臭気を除去する

薬液洗浄法は、気相にある臭気物質を液相へ移行させることでガスを浄化する方法です。臭気と薬液を気液接触させ、化学的な中和や酸化によって臭気成分を除去します。使われる薬液は酸、アルカリ、次亜塩素酸ソーダで、臭気の性質に応じて選び分けます。

公益社団法人におい・かおり環境協会が公開している解説資料によると、酸性ガスには苛性ソーダ液、塩基性ガスには硫酸溶液、イオウ系臭気には次亜塩素酸ソーダ溶液が使用されます。装置の方式は、充填塔やスプレー塔のような液分散型と、気泡塔や漏れ棚法のようなガス分散型に分けられます。臭気は塔の下部から入って充填物のあいだを上昇し、塔頂部のノズルから供給される薬液と向流接触する構造が一般的です。洗浄液はポンプで循環させ、力価が低下してくると薬品を補充します。

参照元:におい・かおり環境協会【PDF】(https://www.soumu.go.jp/main_content/000674416.pdf)/2026年8月時点で公開されている記載値です。

土壌脱臭装置は土壌中の微生物による分解で臭気を除去する

一方の土壌脱臭法は、好気性のバクテリアの働きで臭気を酸化分解する生物脱臭法の一種です。薬品や燃料を使わず、土壌中に生息する微生物が臭気成分を分解します。臭気を含む空気を土壌層に通し、ろ材への吸着と微生物による分解を経て処理する仕組みです。

におい・かおり環境協会の資料では、よく用いられる土壌として関東ローム層の黒ぼく土が挙げられています。団粒構造で腐植質が多く、通気性と保水性に優れているためです。近年は黒ぼく土に汚泥コンポストやゼオライト、パーライトなどを配合した改良土壌も使われており、通気性の向上や吸着力の改善がみられたとの報告があると記載されています。処理に必要な時間を土壌との接触で稼ぐ方式のため、薬液を補充するという発想の維持管理は発生しません。

名前の似た「生物スクラバー方式」とは別の方式

検討の場で混乱が起きやすいのが、本記事で扱う薬液洗浄式スクラバーと、生物脱臭の一種である生物スクラバー方式の区別です。名前は似ていますが、臭気を除去する原理がまったく異なります

におい・かおり環境協会の資料では、生物脱臭法のうち菌が棲む液体と臭気ガスを接触させる方法として、活性汚泥ばっ気法とバイオスクラバー法が挙げられています。つまり生物スクラバーは微生物に分解させる方式であり、薬液による化学反応で処理する薬液洗浄法とは別系統です。既設設備の資料に「スクラバー」とだけ書かれている場合、どちらの方式なのかを図面や仕様書で確認したうえで比較を始めることをおすすめします。生物スクラバー方式と土壌脱臭装置の比較については、別の記事で詳しく解説しています。

【比較表】薬液洗浄式スクラバーと土壌脱臭装置の違い

両方式の違いを、公開資料に記載されている項目にしぼって整理すると次のようになります。

項目 薬液洗浄式スクラバー 土壌脱臭装置
脱臭の原理 薬液との気液接触による化学的中和・酸化 土壌中の微生物による吸着・分解
使用する薬剤 苛性ソーダ・硫酸・次亜塩素酸ソーダなど 使用しない
空塔速度 1〜2m/秒 5mm/秒
液ガス比 2〜4L/㎥(ガス) 該当なし(乾燥防止の散水のみ)
設置面積 比較的小さい(縦型の塔) 広い面積が必要
主な日常管理 薬液の濃度・液量のチェックと補充、ノズルの目詰まりや充填物の閉塞の監視 土壌の亀裂・乾燥の視察、表面が固くなったときの耕転、夏季の散水
適した臭気 低・中濃度で水溶性の臭気成分 低・中濃度の臭気(下水処理場・し尿処理場での適用例が多い)
参照元:におい・かおり環境協会【PDF】(https://www.soumu.go.jp/main_content/000674416.pdf)/2026年8月時点で公開されている記載値です。上表は同資料の記載事項のみで構成しており、記載のない項目(導入費用の金額、除去率の具体値など)は行を設けていません。

空塔速度と設置面積の差

2つの方式で大きく異なるのが、装置の断面を空気が通過する速さである空塔速度です。この値の差が、そのまま設置面積の違いに現れます。

薬液洗浄法では、薬液と接触した瞬間に化学反応が進むため、空気を速く通しても処理が成立します。そのため縦型の塔にまとめられ、設置面積を小さく抑えられます。対して土壌脱臭法は、微生物が臭気成分を分解するのに約100秒の接触時間を要すると記載されており、その時間を確保する手段として断面積を広げる設計になります。におい・かおり環境協会の資料に記載された運転条件を並べると、薬液洗浄法は1〜2m/秒、土壌脱臭法は5mm/秒と、200倍から400倍の開きがあります。設置面積の違いは装置の性能差ではなく、脱臭の原理から生じる構造上の帰結です。敷地に余裕がない現場で薬液洗浄式が選ばれやすいのは、この点によります。

参照元:におい・かおり環境協会【PDF】(https://www.soumu.go.jp/main_content/000674416.pdf)/2026年8月時点で公開されている記載値です。倍率は、この資料に記載された各方式の空塔速度どうしを本記事で割って算出しました。

消耗品とランニングコストの構造の違い

維持費の性格も両者で異なります。薬液洗浄式は薬剤を継続的に購入する構造、土壌脱臭は薬剤の購入自体が発生しない構造です

薬液洗浄法では洗浄液をポンプで循環させ、力価が低下してくると薬品を補充します。運転条件として液ガス比は2〜4L/㎥(ガス)が設定されるため、処理風量が大きいほど扱う薬液量も増えます。加えて、臭気の性質ごとに薬液を選び分ける必要があるため、複数成分が混在する現場では管理項目が増える傾向にあります。土壌脱臭法では薬品を使用しないため、この費目そのものが発生しません。ただし、におい・かおり環境協会の資料が示すとおり、薬液洗浄法は設備費や運転費が比較的安いと記載されており、費用面で常に土壌脱臭が有利になるわけではない点には注意が必要です。

維持管理で発生する作業項目の違い

日々の運用で担当者が行う作業の中身も、方式によって変わります。薬液洗浄式は液の管理、土壌脱臭は土の管理が中心になります

薬液洗浄法の日常管理としてにおい・かおり環境協会の資料に挙げられているのは、薬液の濃度や液量のチェックと補充、ノズルの目詰まりや充填物の閉塞の監視、そして年数回行う塔内部の充填物の洗浄です。液の状態を数値で把握し続ける管理が求められます。一方の土壌脱臭法では、土壌の亀裂や乾燥の状況を視察し、表面が固くなれば耕転し、夏季の乾燥時にはスプリンクラーで散水します。目視と体感で状態を判断する場面が多く、薬剤の在庫管理は不要です。どちらもメンテナンスフリーではなく、必要な作業の種類が異なると理解しておくことが大切です

どちらが適するかを判断する視点

薬液洗浄式スクラバーが
適するケース

薬液洗浄法が候補として有力になるのは、水溶性の臭気成分が主体で、かつ設置面積を大きく取れない現場です。におい・かおり環境協会の資料でも、低・中濃度の臭気で水溶性臭気成分を含むものに適していると整理されています。

縦型の塔で処理できるため、既存建屋の脇や屋上など限られたスペースにも収まりやすい構造です。設備費や運転費も比較的安いと、におい・かおり環境協会の資料に記載されています。ただし同資料は、臭気成分の100%除去は難しいとも記載しています。水に溶けにくい成分が混在する場合は、単独では処理しきれない可能性を織り込んだうえで検討を進める必要があります。

参照元:におい・かおり環境協会【PDF】(https://www.soumu.go.jp/main_content/000674416.pdf)/2026年8月時点で公開されている記載値です。

土壌脱臭装置が適するケース

土壌脱臭法が候補になりやすいのは、低〜中濃度の臭気が連続的に発生し、かつ敷地に余裕がある現場です。におい・かおり環境協会の資料には、広い敷地面積が必要であるため下水処理場やし尿処理場での適用例が多いと記載されています。

薬品や燃料を使わない方式のため、薬剤の調達や在庫管理から解放される点が運用面での特徴です。多様な微生物が土壌中に生息するため、性質の異なる複数の臭気成分が混在する複合臭にも対応しやすい点が特徴です。一方で、微生物の働きに依存する以上、立ち上げには馴らし運転の期間を見込む必要があり、即効性が求められる場面には向きません。

判断の前に確認しておきたい前提条件

どちらの方式を選ぶ場合でも、判断の前提となる情報を揃えておくと検討が進めやすくなります。臭気成分の種類、濃度、処理風量、確保できる敷地、そして排水処理設備の有無の5点が基本の確認項目です。

臭気成分の種類と濃度は、どの方式が原理的に適合するかを決めます。処理風量と敷地は、装置が物理的に収まるかを決めます。薬液洗浄法を選ぶ場合、洗浄後の廃液をどう処理するかも計画に含める必要があるため、施設内に排水処理設備があるかどうかが判断材料になります。これらの前提が固まっていない段階で方式だけを先に決めると、設計が進んでから条件の見直しが生じやすくなります。現地調査と臭気の測定を経て条件を確定させたうえで、方式の比較に入る進め方が確実です。

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本サイトでは、「臭いが消えない」「維持費がかさむ」など、失敗しない土壌脱臭装置選びができるようおすすめの装置を調査しました。

中でも、給食センターや公共施設などから発生する【水処理系の脱臭】と、し尿処理場や堆肥化施設などから発生する【汚泥処理系の脱臭】それぞれに適した装置を厳選。おすすめの理由をわかりやすく解説し、事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

薬液洗浄式スクラバーと土壌脱臭装置は、どちらも低・中濃度の臭気を対象としながら、除去の原理が根本的に異なります。薬液洗浄式は薬液との化学反応で処理するため空塔速度を大きく取れ、装置をコンパクトにまとめられる一方、薬液の管理と補充が継続します。土壌脱臭は微生物の分解に時間を要するため広い面積を必要としますが、薬剤の購入は発生しません。どちらが優れているかではなく、臭気の性質と敷地条件、運用に割ける手間のどれを優先するかで適した方式が決まります。名前の似た生物スクラバー方式との区別も含めて、既設設備の方式を正確に把握したうえで比較を始めてみてください。

参照元:におい・かおり環境協会【PDF】(https://www.soumu.go.jp/main_content/000674416.pdf)/2026年8月時点で公開されている記載値です。